ジョン・F・ケネディという指導者とメディアの関係について論じる。
国の大きな決断までも曲げられるメディア
現代人にとってなくてはならないのがメディアだ。ツイッターやフェイスブックなどのSNS、ネット記事などがある。しかし、近年取材不足によって誤報を流してしまったり、視聴率のために事実を捻じ曲げニュースを流すテレビ局があったり、ネットにはフェイクニュースなどといったおもしろさのみを追求した完全なデマを流すものまである。それらは人々の考えを操作し、国の大きな決断までも好きな方向へ曲げられる。そのいい例が、テレビが白黒の時代から証明されている。ジョン・F・ケネディとリチャード・M・ニクソンとのテレビ討論だ。
選挙で勝利したのは
アメリカでは当時、民主党のケネディ候補、共和党のニクソン候補が激しい選挙戦を繰り広げていた。世論調査ではニクソンがケネディをわずかにリードしていた。ニクソンは8年間の副大統領経験があり、政治家としてのキャリアも長く、演説の技術もあった。一方、ケネディは当時、年齢が若く政治経験も少ないため、多くの政治評論家はニクソンの勝利を確信していたほどだった。
しかし、このテレビ討論で流れが一変した。ラジオで聴いていた人々は、ニクソンが討論に勝利したと思っていたが、8000万人が視聴したテレビ討論では、テレビを見た者の多くがケネディの勝利を確信し、実際にケネディが選挙に勝利したのだ。
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では、ラジオを聞いていた人達はどうだったのだろうか。ラジオのみ、つまり両者の話のみを聞いていたほとんどの人たちはニクソンの方が冷静で、理性的だと思ったそうだ。そのため、ラジオを聴いていた人達は、ケネディが選挙で勝って驚いたのだった。
メディアが伝えるモノの違い
なぜこのような結果になったのだろうか。原因はいくつか考えられる。一つにメディアが伝えるモノの違いがある。当時のテレビ討論の映像を見ると、ケネディは座り方が落ちついていて、余裕があるように見える。スーツもニクソンより濃いので、信用できると国民に思われた。テレビ用の化粧もまた、影響を与えた。
ニクソンは化粧を嫌い、されることを拒否した。体形に合っていないスーツや暗い表情、顔色、曲がった背筋等々、実力や自信はあったはずのニクソンは考え得る全ての悪手を取ったかのような悪い印象をテレビを見た人達に与えたのだ。
ケネディが選挙で勝利したその裏側には、ケネディ陣営の緻密な外見戦略があった。そして、これ以降、アメリカの大統領選ではこの外見戦略が一般化したのだ。
人は何を見せ見るかで判断する
要するに、人は何を語り聞くかではなく、何を見せ見るかで判断するイキモノということではないだろうか。そう考えると、政治もその他娯楽や犯罪も同じように思う。歌が下手なかわいいアイドルが人を集め、身なりの整った清潔な詐欺師が金を集め、人種差別を平然と行う大国のかっこいいトップが票を集める。どれも同じである。多くの人は視覚によって正常な判断を鈍らせているのがメディアの登場によって証明されたのだ。
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